機械翻訳とプロの翻訳の違い
October 30, 2023最近では機械翻訳の出力結果の精度を上げるために、翻訳の前に「プリエディット」をされる方も増え、機械翻訳に配慮するといった傾向もあります。使い方次第で機械翻訳は有効かもしれません。ただ完璧にはまだほぼ遠く、ポストエディットにも限界がありますので、以下のポイントを注意事項としてご参照下さい。 ① 誤訳する プロの翻訳者は一括置換・コピー&ペーストといった作業で数値を扱い、校正者が数値のミスをチェックして、誤訳を防ぐ。対して機械翻訳は類似する文章を出力し数値を処理するために、翻訳前と翻訳語では異なる数値が出ることもあります。 (例) 肯定と否定を間違えるといった基本的な間違えを犯しても、機械にとっては重要ではありません。プロの翻訳者であれば原文を咀嚼してから作業するため、このような基本的な間違えを残したまま、作業を進めて気づかないということ自体ありえないことです ②機械翻訳は訳抜けに気付かない 翻訳しなければならない必要な情報が訳されてない。自然で流暢な訳文が出来ているように見えても、必要な情報が抜け落ちていれば、正確な情報は伝えられない。 長い文章、固有名詞が多く混ざる文章で丸ごと抜けていても、原文と付き合わせて読まない限り見つけようがない。機械翻訳の領域では「例文に基づいて判断できない=ないものとして無視する」という処理が起こります。 参照:https://note.com/sagi_291/n/n67c80c6944e6 余分なフレーズが追加されて訳されていることがあっても、訳語が自然であれば誤訳を見つけようがない。 ③文脈を読めない 機械翻訳は目の前の文字、単語、文章をあるがまま処理しているだけです。機械翻訳は一語一文を区分けして処理するのに対して、プロの翻訳者は文脈をまず・考慮して、最適な訳語を見つけ、情報を正しく伝える訳文を作り上げます。 機械翻訳が読んでいる文章は、全体の表層にしか過ぎません。この処理の仕方が、英語から日本語(和訳)、日本語から英語(英訳)の翻訳においては、間違えを生み出す理由になります。 ④文法の違いを理解できていない これはあまり議論が進んでいない大切なポイントです。 日本語は極端なハイコンテクストである以上、書かれている文章から伝えるべき情報を文脈に沿って推測し訳す必要があります。 英語は一つの単語に複数の意味があり、プロの翻訳者は文脈と背景から的確な訳語を見つけます。そして英語には日本語にはない文法(関係代名詞、冠詞、単数・複数)が例外も含め無限にあり、日本語に訳す際に、文法を正しく理解した上で訳し、日本語ネイティヴにとって読みやすい文章にしなければ、正しい情報は伝わりません。 日本語では語順は自由度が高いのに対し、英語は膠着言語という性質から構造や語順に対し厳格です。プロの翻訳者は、この文法上の相違を熟知した上で、文脈に沿って翻訳をしますが、機械翻訳は文章を一旦数値に変換して処理するため、かなりの無理が発生します。 ⑤文章構成力がない ⑥文章構成力がない 機械翻訳システムの内部はブラックボックスであり、どういった翻訳の出力文章が出てくるかわかりません。翻訳は恣意的な言語の置換作業ではなく、論理的かつ知的な言語能力の表現です。「どうしてこの翻訳なのか」という訳文の説明が出来ない文章は正しい翻訳文章ではありません。何が起こっているかわからないブラックボックスに関してはメインストリームでは議論・重要視されていませんが、根拠と説明のつかない信用できるか出来ないか明確ではない翻訳を情報としてビジネスに使うことにはリスクが必然的に発生します。 ⑦用語統一にばらつきがある プロの翻訳者はばらつきを防ぐため、用語を統一させてから翻訳作業を完了します。仮にばらつきがあったとしても校正者がそれを修正します。機械翻訳はこのばらつきを防ぐという作業に大変弱いのが現状レベルです。用語が統一されていなければ、読み手・オーディエンスは別の言葉・情報があるのかと誤解します。正しい情報を伝えるために用語統一は不可欠です。 ⑧主語や文章のトーンが統一できない